ヘリコバクターピロリ菌について
ピロリ菌となんとなくかわいい名前ですが、昔から日本人を苦しめてきた細菌です。発見者が2005年にノーベル賞を受賞したことで、存在が広まったと思います。
感染は、経口感染と考えられており、ピロリ菌に汚染された水や食品、保菌している親から離乳食の口移し等で感染が広まったと考えられています。現在の日本では衛生環境が良くなったため、若年の感染率は低下しています。
胃・十二指腸潰瘍や胃がんの原因として有名ですが、胃だけではなく様々な全身疾患にも関連があると分かってきました。
ピロリ菌は除菌が可能です。抗生剤を含んだ3剤併用療法が標準治療で約7~8割の成功率と言われています。耐性菌に対しては、それに対する薬剤を変更した除菌を行います。
そのため、1次・2次除菌までが保険診療で可能です。ただし、これで除菌が出来なければ、現状は経過観察となります。
当院では、除菌ができなかった患者さんを対象に3次除菌以降の治療を自費診療で行うことができるようにヘリコバクターピロリ菌専門外来を開設しました。
また、ペニシリンアレルギーの方にも対応するようにしています。
胃がんに対する除菌療法の予防効果は、若年であるほど効果的であり、高齢者においても3分の1程度に抑えると言われています。ただし、ここで注意してほしいのは、除菌治療を成功したからと言って、胃がんがなくなるわけではないということです。除菌治療をした後は胃カメラを受けなくてよいと勘違いされている方が非常に多いのですが、除菌後も胃がんは発生する可能性はあります。しかも、除菌後に発見される胃がんは胃カメラでは非常に見つけにくい平坦であることが多く、一見すると分かりにくいのです。当院では、そのような胃がんの見落としを少なくするため、最新機種・拡大内視鏡を用いて、発見に努めています。
日本人の死因は、悪性新生物(がん)、心疾患、肺炎と続き、第1位のがんは、全死亡者の約3割を占め、一貫して増加しています。
■がん死亡数予測(2017年)



■がん罹患数予測(2016年)



(国立がん研究センターがん情報サービス、人口動態統計より)
2017年のがん死亡数予想では、男性は肺、胃、大腸、女性では乳房、大腸、胃が以前より上位を占めるのはほとんど変わっていません。また、罹患率を見ますと、全体としては大腸癌・胃癌が1位・2位となっています。